Googleのインターンに応募

したのは僕ではなくて、コンピューター・サイエンスを専攻する、とある友人。Googleがここ最近実施している、Mountain View本社でのサマー・インターンには、世界中の才能が集まってくるようで、競争は激しい。提出するエッセイの作成に仲間内何人かで付き合わされたのである。といっても、素直なやつでボコボコにしても決して凹まないすばらしい図太さを持っているので、こちらもついつい本気モードで添削にも力が入る。燦々と輝く太陽と心地よい風、広大なキャンパス、一流シェフの作るタダ飯、セグウェイ乗り放題に対する彼のイメトレなんてのはどうでもよく、いかに自分を売り込むか、いや自分を理解するかを搾り出すために、徹底的にいじめる。

残念ながらその詳細は本人の名誉のために書けないのだが、サポートする中で僕が思ったことの一部を。

「協調性」か「個性」かについて

応募するに当たってどちらを強調すべきかという仲間内での議論。Googleは個性の集まりという印象もあるが、もはや大企業だしチームワークも大事。僕の意見は両方とも重要。サンでは天才エンジニアと呼ばれるような人と何度か一緒に仕事してきたけど、共通して言えるのは、人当たりが非常に良く、控えめで、人の話に謙虚に耳を傾ける、みんな人間的にすばらしいということ。そしてどんな稚拙な質問に対しても論理的で丁寧な自論を返してくれた。藤井さんのブログに、XMLの父でRSS/Atomを作ったTim Brayとのコミュニケーションが書かれているが、総じてこんな感じである。一方趣味や趣向は、ここでは書けないほど変だったりする。Googleにいるくらいのエンジニアであったら才能も人間性もなんでも持ちすぎるくらい持っているはず。ほとんどのエンジニアが知り合いからの引き抜きで入社してるのは、その人が能力もさることながら、他人から一緒に働きたいと思われる人間性を持ち合わせているということ。

エンジニアという職種について

一口にエンジニアと言うと大半の学生は、開発者、プログラマーというイメージを持つ。だがそれは広義のエンジニア(つまりSuitに対するTechie)のほんの数パーセントであり、ベイエリアの大手ソフトウェア・ベンダーのエンジニアリングの職種は多伎に渡っているということ(Googleの場合は開発者の比率は、異常に高いはずが)。開発エンジニア(これもかなり細分化されるはずだけど)だけでなく、ざっと挙げてみるだけでも、とにかくいろいろあるのである。

プロダクト・マネージャ
開発チームの横にいて、製品・サービス開発のロードマップや要求仕様書、進捗管理をまとめる人。
プロダクト・マーケティング
プロダクト・マネージャと連携して製品のロードマップや製品戦略を作る人。製品の顔。Start-up企業の買収なんかは、ここが決定したりする。(基本ビジネスサイドだが、エンジニアリングバックグラウンドがほとんど。)
ビジネス・ディベロップメント
製品を市場や顧客に広めるための、スキームを作る人。マーケ、営業、製品開発、外部のパートナーなどいろんなプレーヤーと連携。(これもエンジニアバックグラウンドの人が多い。)
テクニカル・マーケティング
製品を使ったデモンストレーションやプロトタイプ作ったりして、製品のプロモーションを技術の観点からサポートする人。
ローカライゼーション
各国向けに製品をアレンジする人。ローカルオフィスにいることもあるし、本社の開発チームの近くにいる場合もあり。
リサーチャー、サイエンティスト
R&DのRを中心に担当。研究所やCTOオフィスの人。製品にとどまらない、明日の技術とか、テクノロジーの方向性などを研究してる。業界の標準仕様を決めている人がたくさんいる。彼らのボスはCTO。
エバンジェリスト
上よりマーケットより。自社の技術や製品を文字通り啓蒙活動する人。いろんなところで執筆やらインタビューやら講演する機会が多いので、業界の有名人。元々はみんなプログラマとか。
アーキテクト
上に近いけど、より個別の顧客より。自社の製品や技術の顧客での適応を示す人。営業やSEと一緒に顧客訪問してさらっとホワイトボードにアーキテクチャーを書いて、それが採用されちゃうような人。
システム・エンジニア、フィールド・エンジニア
いわゆるSE。営業とチームを組んで、顧客に対する提案活動をする人。基本製品が売れる前のpre-salesの対応。XX業界担当とかXX社担当とかアカウントが決まっている。セールス・エンジニアとも呼ばれる。
プロフェッショナル・サービス、コンサルタント
自社の製品を使ったシステムの構築をする人。もしくはその支援をする人。製品のカスマタイズも行う。製品が売れたあとの構築担当なので、post-salesと呼ばれることも。
プロジェクト・マネージャ
構築プロジェクトの責任者。上のコンサルタントを束ねる人。技術もコミュニケーション能力もなんでもござれれのプレッシャーに強いスーパーマンが多い。この人も広義ではエンジニアって呼んでいいと思う。
カスタマ・サポート
製品の保守・メンテナンスをする人。顧客サイドに常駐する人もいるし、電話・メールでのサポートということも多い。トラブルの原因が何なのかを切り分けて製品バグがあれば、テクニカル・サポートや開発チームにエスカレーションする。地味であるが、ほとんどのソフトウェア企業で継続的かつ確実な売上を上げているのは彼らのおかげだったりする。
テクニカル・サポート
カスタマ・サポートとプロフェッショナル・サポートの中間くらいに位置する人。べったり構築まではやらないが、製品のtipsなどをいろいろ示してくれる。製品チームと近いので、いろいろ細かな対応してくれる人。

部門名や職能、肩書きを一緒にしてしまったが、かなり大雑把に言うと以上のような感じである。その他社内のIT部門の人とかトレーニング担当者とかもいる。前の会社の組織をベースにしているが、大体どこも似たような感じみたい。Googleサービス・プロバイダーなので、パフォーマンスチューニングや、UIのプロなども大勢いて、ちょっと毛色が違うようだが大きくは外してないはず。

で、言いたいのは、ベイエリアではプログラマーが尊敬されていて、新卒では一番入りやすくサラリーが高いってのもあるのだが、将来どんな仕事をやりたいのかイメージがあるかどうかが、とても大切だということ。

と以上だが、内容に関してどこかから鋭い突っ込みが来るに違いない。


因みに、弊大学の情報学の学生達は非常に恵まれていて、わざわざGoogleの中の人が東京からやって来て、構内で会社説明会を実施してくれる。おそらくこうして地方まで来てもらっている大学は国内では他にはないんじゃないか。もちろん僕はその中に潜り込んで、いけしゃあしゃあと中の人が答えづらい質問などしたりして、さらにその質問のご褒美に"I'm Feeling Lucky" T-Shirtsなどを貰って狂喜乱舞して、その足で担当教官のところに立ち寄って自慢した日には、「何っ!俺も行けばよかった!」と羨ましがられたりして、つまり何が言いたいかというと、都会の喧騒から離れた本学のキャンパス・ライフはかくも平和に流れていくのである。

「他人はいいから自分の職の心配しなさい」と心の声が囁いたので、勉強の合間に思わず 無職.com を眺めてみる。このサイト、マッタリとした雰囲気で、お互いを尊重しながらなかなか建設的な会話が繰り広げられていて、ちょと驚いた。匿名掲示板でこのマイルドなサイト・カルチャーは注目に値すると思う。